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基板粉塵の主成分「ガラスエポキシ樹脂粉」とは?半導体現場の対策

電子部品を実装し、回路を形成するプリント基板の製造や、基板を製品ごとの形状に切り出す外形加工の現場では、加工時に発生する粉塵への対策が、製品品質や作業環境を維持するうえで重要な課題となっています。
特に、日常的に発生する基板粉塵には、一般的なホコリとは異なる性質があるため、特徴を理解したうえで適切に対策を講じることが大切です。
本記事では、基板粉塵の主成分である「ガラスエポキシ樹脂粉」の特徴をはじめ、半導体や基板実装の現場で起こりやすいトラブル、現場で実践しやすい粉塵対策などをわかりやすく解説します。
ガラスエポキシ樹脂粉とは
電子機器や半導体製品に使われるプリント基板の加工現場では、目に見えないほど細かな粉塵が発生しています。
その多くを占めるのが「ガラスエポキシ樹脂粉」です。
まずは、どのような物質なのか、基本的な特徴から見ていきましょう。
基板粉塵の多くを占める理由
プリント基板の加工現場で発生する粉塵の主成分は、ガラスエポキシ樹脂が削られてできた細かな切削粉です。
その理由は、現在の電子機器で使用されるプリント基板の多くに、「FR-4」と呼ばれるガラスエポキシ基板が採用されているためです。
基板の製造工程や実装工程では、基板の外形を切り出すルーター加工や、基板を折り取るためのVカット加工、部品を取り付けるための穴あけ加工などを繰り返し行います。
こうした加工の際に基板の土台となる材料が削られ、大量の粉塵となって周囲へ飛散します。
基板の表面には、銅箔やソルダーレジスト(基板表面を保護する絶縁塗料)なども積層されています。
しかし、基板の厚みの大部分を占めているのはガラスエポキシ層です。
そのため、加工時に発生する粉塵のほとんどはガラスエポキシ樹脂粉になります。
つまり、基板粉塵への対策を進めることは、ガラスエポキシ樹脂粉への対策につながるといえるでしょう。
ガラスと樹脂を混ぜた素材
ガラスエポキシ樹脂とは、ガラス繊維を織り込んだクロス(ガラス布)にエポキシ樹脂をしみ込ませ、熱を加えて硬化させた複合材料です。
異なる性質を持つ2つの素材を組み合わせることで、高い電気絶縁性と機械的な強度を両立しています。
ガラス繊維は硬く、温度変化による伸び縮みが少ないため、基板の変形を抑える役割を担います。
一方、エポキシ樹脂は熱や薬品に強く、電気を通しにくい性質を持つ素材です。
それぞれの長所を組み合わせることで、精密な電子回路を支える基板材料として利用されています。
一方で、加工によって粉塵になると、これらの性質が扱いにくさにつながります。
粉塵には硬いガラスの微粒子と、静電気を帯びやすい樹脂の微粒子が混在しているためです。
その結果、一般的なホコリと異なり、設備や製品への付着、作業環境への影響を引き起こしやすくなります。
現場で起こる主なトラブル
ガラスエポキシ樹脂粉が工場内に拡散すると、製品品質だけでなく、生産設備や作業環境にもさまざまな悪影響を及ぼします。
代表的な3つのトラブルについて確認していきましょう。
粉の付着による基板ショート
精密な回路が形成された基板や半導体パッケージの表面にガラスエポキシ樹脂粉が付着すると、回路トラブルにつながります。
特に、高密度に部品が実装された基板では、配線同士の間隔が非常に狭いため、わずかな粉塵でも影響を受けやすくなります。
主なトラブルは次のとおりです。
- 回路パターンの間に微細な粉塵が入り込み、一時的に絶縁抵抗が低下する
- 湿気を吸収した粉塵が導電経路となり、回路同士が意図せず導通してショートを引き起こす
- コネクタや端子の接続部に微粒子が入り込み、接触不良が発生する
こうした不具合は、製造時の検査で見つかるとは限りません。
出荷後、製品の使用中に結露や湿気の影響を受け、付着した粉塵が原因でショートする場合もあります。
不良品の増加だけでなく、市場での不具合や品質への信頼低下につながる可能性があるため、粉塵の付着を防ぐ対策が重要です。
ガラス繊維による設備の摩耗
ガラスエポキシ樹脂粉に含まれるガラス繊維は硬度が高く、設備内部に入り込むと部品の摩耗を早める原因になります。
たとえば、基板を切削するルータービット(切削用の刃)は、ガラス繊維との接触によって刃先が徐々に摩耗します。
それが進むと切削精度が低下し、基板の断面にバリ(加工後に残る小さな突起)が発生しやすくなります。
工具の交換頻度が増えるため、維持管理にかかるコストも大きくなるでしょう。
また、搬送ロボットや加工機のガイドレール、ボールねじ、スライド軸受などの精密な可動部に粉塵が入り込むと、部品の偏った摩耗や動作不良を引き起こします。
加工精度が低下するだけでなく、突発的なライン停止につながる可能性もあり、修理やメンテナンスの負担が増える要因になります。
作業者の肌荒れや健康被害
ガラスエポキシ樹脂粉は、製品や設備だけでなく、作業者の健康にも影響を及ぼします。
粉塵に含まれる微細なガラス繊維は先端が鋭いため、皮膚に付着するとチクチクした痛みやかゆみなどの症状が現れることがあります。
ガラス繊維は一度皮膚に付着すると、水で洗うだけでは落ちにくく、無理にこすると皮膚の奥まで入り込み、接触皮膚炎や肌荒れにつながるため、適切な対処が必要です。
また、空気中に浮遊する微細な粉塵を継続的に吸い込むと、鼻や喉の粘膜が刺激され、せきや喉の違和感などの症状が現れます。
長期間にわたり高濃度の粉塵を吸入した場合は、呼吸器への影響が懸念されるため、労働安全衛生の観点からも粉塵へのばく露(吸入や皮膚への付着)を抑える環境づくりが重要です。
対策や掃除が難しい理由
ガラスエポキシ樹脂粉は、一般的な工場で発生するホコリとは性質が異なるため、清掃や除去に手間がかかります。
その背景には、粒子の細かさと静電気を帯びやすい性質があります。
ここでは、対策が難しい主な理由を2つ紹介します。
微小で舞い上がりやすい性質
ガラスエポキシ樹脂粉は、粒子の大きさが数マイクロメートルから数十マイクロメートルと非常に小さく、軽いことが特徴です。
そのため、一度空気中に舞い上がると、わずかな気流でも長時間浮遊しやすくなります。
現場では、基板や加工機に付着した粉塵をエアガン(圧縮空気で異物を吹き飛ばす工具)で除去することがあります。
しかし、この方法では目に見える粉塵は取り除けても、微細な粒子は空気中へ拡散してしまいます。
空気中に広がった粉塵は、時間の経過とともに別の工程の基板や設備へ付着するため、汚染範囲が広がる原因になります。
静電気による付着と再浮遊
静電気を帯びやすいことも対策が難しい理由のひとつです。
基板材料に含まれるエポキシ樹脂は、電気を通しにくい性質があり、加工時の摩擦によって静電気が発生します。
静電気を帯びた粉塵は、基板や搬送ベルト、装置の内壁などに付着しやすくなります。
そのため、集塵機で吸引したり、風を当てたりするだけでは、十分に除去できません。
さらに、時間の経過や設備の振動、人の移動などによって帯電状態が変化すると、一度付着した粉塵が再び空気中へ舞い上がります。
この再浮遊によって、清掃後も粉塵が広がりやすくなり、繰り返し清掃が必要になるケースもあります。
現場で実践すべき粉塵対策
ガラスエポキシ樹脂粉によるトラブルを防ぐには、粉塵が工場内へ広がる前に回収し、静電気による付着を抑えることが重要です。
ここでは、半導体や基板実装の現場で取り入れやすい基本的な対策を紹介します。
発生源で直接吸い取る工夫
粉塵対策では、加工時に発生した粉塵を、発生源の近くで回収することが基本です。
たとえば、次のような方法があります。
- 切削工具やドリルの周囲に小型のフードやカバーを設置し、集塵機で吸引する
- 集塵機の吸引ノズルを加工点の近くに配置し、効率よく粉塵を吸引する
- 基板の分割作業を行うエリアをアクリル板などで囲い、粉塵の飛散を抑えた上で集塵する
発生源で粉塵を回収できれば、工場内へ広がる粉塵を大幅に減らせます。
結果として、設備や製品への付着を抑えやすくなり、作業環境の維持にもつながります。
静電気の除去と付着の防止
ガラスエポキシ樹脂粉は静電気を帯びやすいため、集塵とあわせて除電対策を行うことも重要です。
そのため、イオナイザー(静電気を除去する装置)を使用し、加工部や製品の静電気を中和しながら、粉塵を吸引する方法が広く採用されています。
静電気を抑えることで粉塵が離れやすくなり、集塵機による回収効率の向上が期待できます。
また、作業台に導電性マットを敷いたり、作業者が静電靴や導電性手袋を着用したりすることも、静電気の発生を抑える対策として有効です。
発生源での集塵と、静電気対策を組み合わせることで、粉塵の飛散や付着を抑え、製品品質や設備の安定稼働にもつながるでしょう。
設備を使った効果的な除去
作業方法や運用の見直しに加え、現場で発生する粉塵の特性に合った設備を導入することも重要です。
ここでは、集塵設備やフィルターを選ぶ際に押さえておきたいポイントを紹介します。
専用集塵機による局所集塵
ガラスエポキシ樹脂粉を効率よく回収するには、加工点の近くで粉塵を吸引する「局所集塵」を行いましょう。
そのためには、高い吸引力を維持できる専用の集塵機が適しています。
一般的な業務用掃除機は連続稼働には不向きであるため、微細な粉塵を長時間吸引する用途には適していない場合があります。
集塵機を選ぶ際は、設置場所や吸込口の大きさに合わせて、必要な風量や静圧(吸引する力)を備えているかを確認しましょう。
特に、小さな吸込口から粉塵を効率よく回収する場合は、静圧の高い機種が適しています。
また、フィルターに付着した粉塵を自動で払い落とす「塵落とし機能」などが搭載されていると、吸引性能を維持しやすくなり、長時間の連続運転にも対応できます。
高性能フィルターの選定
集塵機の性能を十分に発揮するためには、フィルターの選定も重要です。
ガラスエポキシ樹脂粉は、粒子が細かいため、ろ過性能が十分でないと、微細な粉塵が排気とともに再び工場内へ放出される可能性があります。
用途に応じて、次のようなフィルターを組み合わせる方法が一般的です。
- プレフィルター:大きな切りくずや粗い粒子を捕集する
- 高性能フィルター:微細なガラス粒子や樹脂粒子を捕集する
- HEPAフィルター:さらに細かな粒子を捕集し、排気をより清浄に保つ
また、エポキシ樹脂の粉塵は湿気や油分によってフィルターへ付着しやすくなる場合があります。
目詰まりを抑えやすいコーティング加工が施されたフィルターを選ぶことも、安定した運用につながるでしょう。
まとめ
加工時に発生したガラスエポキシ樹脂粉を放置すると、製品品質への影響だけでなく、設備の摩耗や作業者の健康への影響につながる可能性があります。
対策を進める際は、エアガンなどで粉塵を吹き飛ばさず、加工点の近くで回収することが基本です。
また、静電気による付着を抑える工夫を取り入れるとともに、粉塵の粒径や発生量に合わせて集塵機やフィルターを選定することも重要になります。
目に見えにくい粉塵だからこそ、まずは発生場所や付着しやすい箇所を把握し、現場に合った対策を進めることが大切です。
設備や運用方法を継続的に見直すことで、製品品質の維持と働きやすい作業環境づくりにつながるでしょう。

